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11月 14, 2006

職場にてⅡ

残念ながら、という書き出しから始めないといけないのは心苦しい。
前回の記事で紹介したA君だが、残念ながら私の職場から去る事になった。
ただし、彼に職場から去ってもらう・・・・まわりくどい書き方をするのは止めよう。

彼に対して解雇する事への引き金を引いたのは上司では無い。僕だ。

その当初、上司から面接を受けた。丁度前回の記事を書いた直後だ。
上「A君はどうですか?使い物になるのですが?」
P「作業者としてはなんとかします」
上「それは『使い物』になるという事ですか?」
P「残念ながらそうではありません。『作業者としてはなんとかなる』という事です。単純に判断の必要の無い作業については私が教えます。」
上「教えるにはどのくらいの努力が必要ですか?」
P「・・・非常に多大な努力が必要です。これは否定出来ません。」
上「わかりました。教育の方をお願いします。」

その後から今日まで、僕は非常に悩みながら、そして多分彼も悩みながら、教育を進めてきた。僕にとっては「物覚えが悪い」というのはそんなに問題ではなかった。物覚えが悪いのならば悪いなりの教え方がある。何度も教え方を変えながらやってみた。今の職場で一番問題なのは教える側のスキルが(僕を含めて)低いという事だ。教える為の色々な手段を用いる前に諦めてしまう事なのだ。「アイツは覚えが悪い」と、それを言うのならば僕も相当悪い訳で、それをして非難される事が多いのだが・・・。


僕がA君に対して苦心したのは「恐怖」だった。

例えばだ、大型プリンターから警告音がで続けているをのA君が無視しているとする。僕は遠くから大声でいう「いつまで鳴らしておく気だ?」と。彼は慌ててのプリンターのディスプレイに駆け寄って、警告音を止め、(何も見ずに)プリンターを再度動かし始める。僕は遠くから「今、なんてメッセージが出ていたの?」と大声で聞く。彼はそこで凍りついたようになって動かない。その後はプリンターから警告音が出ようと身動き一つしない。

P「今、プリンターを動かした時、なんてメッセージが出ていたの?」
A「・・・・・・」
P「聞こえない。そんな時はどうしろと言った?」
A君は一歩だけ近づいて言う、が、聞こえない。
P「まだ、聞こえないぞ!」
A「(やっと聞こえる声で)見ていませんでした」
P「以前からわからないままで作業をしろと言ったか?」
A「いえ」
P「なぜそんな事をした?」
A(十数分沈黙)
P「いいずらいのならば今回の理由をレポートに書きなさい」


レポートのおおよその内容はこうだった。「Pさん大声で注意された時に、私としては怒られていると思った。そのために正常な判断をする事だ出来ずにすぐに動かしてしまった。そしてPさんにその事を言えば怒られると思い、怖くて何も言えなかった。」

いや、まぁ怒らないと言えば嘘になるだろう(苦笑)でも彼の判断は「怒られる方、怒られる方」に進んでいくのだ。
実際に上司から再度の判断を請われた時は僕以外はA君を(いない者)として無視し始めた。


ミーティングで上司から聞かれる
上「A君はどうですか」
P「報告書を用意しましたが、読みましょうか?」
上「いや、YESかNOで」
P「・・・(正直ためらった)・・・NOです」
上「根拠は?」
P「一番の問題は『黙る』という事です。教える側としては、彼が間違った事を覚えているかどうかを判断する事が出来ません。」
P「二つめに何十分も『わからない事をわからないと言ってこない』で押し黙る事です。私が「わからない事を責めない。」という事を言ったとしてもですです。」
P「どちらも教える時、実際の作業でも障害になります。」
P「まだ聞きますか?」
上「いや、いいです。」


ミーティングの最後に上司は聞く
上「彼を止めさせるという事で良い人は挙手を」

誰も手を上げない。
みんな「最初に手を上げた奴」になりたくないのだ。
僕は考える。彼は居場所を失いつつある。ゆっくりと。
ここの作業は彼にはヘビー過ぎる。僕が居る限りはなんとかする。でも、僕が居なくなった時にどうするのか?
せめて職場にもっと余裕が有ればなんとか出来た筈なのに・・・・。

僕は一番最初に手を上げた。僕は負けたのだ。


それからのA君へのアプローチは変わる。
「なんとか他の職場でも通用するような事を教えたい。」

僕の彼に対してなんとかしたい事がある。
「彼のこれからの人生で、なんとか味方になる人が現れるようにしておきたい。」
非常に難しい事だが、しておかなければ僕はこの先も後悔するだろう。

1、恐怖心を克服しないといけない。
彼の恐怖心はすべてマイナスの方向に動いている。だから彼の恐怖心を克服させるか、別の方向にそらさないといけない。
 
2、他人が理解できる形で努力をさせないといけない。
彼がLDであるか自閉的傾向であるかはともかく、覚えが悪いというのは事実だ。問題なのは、彼がそれに対して諦めを持っている事だ「俺は覚えが悪い、これはどうしようも無い」それを他人に感じさせてはいけない。A君が自分の欠点を努力して克服しようとしているのならば、味方になってくれる人が現れるかもしれない。しかし、A君が諦めているのならば、味方は絶対に現れない。

何度もミーティングをする。
P「俺が怖いか?」
A「・・・・・・はい・・・・」
P「怖い人は何人居る?」
A「・・・・・三人居ます・・・・・」
P「そっか・・・・誰が一番怖い?」
A「・・・・・・・・・・・・」
P(待つ、待つ事には慣れている)
A「・・・Pさんです・・・・」
P「(ショボーン)では今の職場は何人居る?」
A「・・・・19人です・・・・」
P「その中でA君に怒るのは何人居る?」
A「・・・二人です・・・」

ここで読めてきた。怒るのは親等のもっと近い人なのでは無いか、なぜか妙に腹が立ってきた。A君をこのような「怖がり」したのは実は一番近い人なのではないかと、「なぜこんな事がわからない?」「何度も教えただろう?」と言われ続ければ、誰でも貝のようになるに決まっている。会った事も無い人に怒りが込み上げてくる。

P「これだけの人数が居る中で二人にしか怒られていないという事に危機感が無いか?」
A「・・・もう・・・駄目かと・・・」
P「この一週間、君を怒ったのは何人だ?」
A「?・・・・一人です。」
P「それは誰だ?」
A「Pさんです。」
P「どんな理由で怒られた?」
A「何も答えないという事で怒られたり、言って来ないという事で怒られました。」
P「君はなぜ何も言ってこなかった?」
A「怒られると思って言えませんでした。」
P「結果、君は怒られなかったのか?」
A「怒られました。」
P「もう一度言う、他の奴は知らんが、俺は君がどんな下らん質問をしても怒らない。忘れたら何度でも教えてやる。だが、聞きに来なかったらその時点で怒るからそう思え。」
A「・・・・はい・・・・・」
P「何か作業をする時に思いだせ。忘れたらPさんに聞きに行くと。」
A「・・・・はい・・・・・」
P「お前がこの先、どんな職場で仕事をするとしても、同じ事をしたら怒鳴り込むからそう思え。」
A「・・・・はい・・・・・」
P「それと一つ、聞いておきたい。」
A「はい」
P「お前は自分で覚えが悪いと認めた事があるよな?」
A「はい」
P「俺はお前の物覚えの悪さを怒ったか?」
A「いえ、ありません」
P「これから先、お前を怒る奴が多分現れるだろう。しかし、そいつがお前の物覚えの悪さについて何も言わないのならば、そいつに必死になってついていけ。そいつはお前をなんとかしたいと思っている。それは俺が保証する。」
A「はい」


僕は泣いていた。


P「そして、自分の物覚えの悪さを諦めるな。なんとかして克服する努力をしろ。努力をする奴をなんとかしようとする奴はきっと現れる」


一部始終を見ていた後輩が言う。
「あいつの一生を背負うつもりなんですか?」
「もう既に二人背負っている。この上一人増えても重くない。」

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コメント

難しい問題ですね。
僕も短期で解雇されたこともあるし、
いろいろと言われました。
何よりも辛かったのは、僕の出来の悪さを見て「障害者」と扱ったところですね。
その時の僕は学習障害どころか発達障害の名前も知らなくて、転職先では2日目に「あなたって障害者?ご両親がかわいそうね」って責任者から言われました。
その前の会社でも「お前って障害者?」とかいわれてそういう目で見られてたし、いくら必死でやっても会議でみんなの前で「僕にはもうジュンソクは扱えません。無理です」って言われましたよ。
ただ初めて就職して2年経った最近になってようやくわからないところに対して他人に聞くことが出来るようになりました。
答えはいまだにわかりませんけどね。
ただ僕を障害者から「変な人、能力がない」になったのはなんとなく気が楽です。

投稿: ジュンソク | 11月 16, 2006 08:57 午後

でも普通だったら数日で出来るのに2年もかかるのってどうだろう?って思いますよ。
これだけでも出来たなら前進と思えますけど、当の本人は「じゃ~普通の人が1年でやれる事が出来るようになる頃定年退職じゃないか?」とか思ってまいます。

投稿: ジュンソク | 11月 16, 2006 08:58 午後

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